宇宙の居場所
就職したことがほとんどない。一度だけ会社に入ったけれど、長いこと引きこもりだったせいか、どうしても馴染めなかった。結局、二十歳くらいで自分の会社をつくった。そこが、ようやく見つけた僕の居場所になった。
なぜ起業したのかと聞かれると、いつも少し困る。世の中を変えたかった、社会を良くしたかった、と答えれば格好はつく。でも正直に言えば、ほかに居られる場所がなかっただけだ。僕にとって会社は、事業である前に、避難所だった。
昨夜、十代の起業家たちと食事をした。夜景の見えるホテル高層階の鉄板焼き。こんな高級な場所は久しぶりで、柄にもなく緊張した。背筋が少しだけ伸びる。
集まったのは16歳から20歳までの5人。それぞれが自分の会社を立ち上げ、売却なども経験して、今はみんなでひとつの宇宙スタートアップを経営している。ベタだとは思いつつ、なぜ起業したのかを聞いてみた。
ひとりはこう答えた。自分の大好きな場所を、自分自身でつくりたい。そのつながりの中で生きていきたい。それに当てはまる言葉が、たまたま起業家だった。
居場所をつくりたい、という点では僕と同じだ。でも、出発点が違う気がした。僕は居られる場所がなくてつくった。彼は好きな場所が欲しくてつくった。マイナスをゼロにするのと、ゼロから何かを立ち上げるのとでは、同じ「つくる」でも手触りがまるで違う。
代表を務める16歳の彼は、もっと極端だった。宇宙に、人類の多様性を保てる小さな国をつくりたい。少数派が追いやられず、自分のままでいられる場所を。そして、領土を奪い合わないための宇宙のルールも。
「それが実現するとき、何歳になってるんだろう?」と聞くと、「300歳くらいですかね」と返ってきた。笑うところかと思って顔を見たら、真顔だった。80歳と言う人には会ったことがある。真顔で300歳と言う人に会ったのは、初めてだった。
彼がつくりたいのは、地球に居場所のない人のための居場所。
だとすれば、彼もどこかで、居られなさを抱えてきたのかもしれない。ただ彼は、それを地球規模の、いや宇宙規模の話にしてしまった。僕は自分ひとりが入れる小さな箱をつくった。彼は、誰も追い出されない星をつくろうとしている。
彼らと同世代の僕の息子は、僕が最初の上場で鐘を鳴らすのを見て、いつか自分も、と言っていた。中学生のころにはBASEやいくつかのスタートアップでインターンもした。けれど結局、いまはDJを生業にしている。爆音の鳴る夜の箱が、きっと彼の居場所なのだろう。親子でも、居場所のかたちはまるで違う。当たり前だけれど。