俺にはオレの乳酸菌
出先で、晩飯をどうしようかと悩んだ。
めぼしい店をいくつかあたってみたけれど、どこも満席か、臨時休業だった。あれが食べたい、これもいいな、なんて浮かれていたはずなのに、何軒か断られただけで、途端に晩飯そのものが面倒になる。腹は減っている。でも、また扉を開けて「すみません、いっぱいで」と言われる場面を想像すると、もう心が折れそうだ。もうやめて、僕のライフはゼロよ。
こういうことが、僕にはよくある。いや、僕だけじゃない。ランチ難民なんて言葉があるくらいだ。わかってはいる。わかってはいるのに、こうなると、自分ばかりがこんな目に遭っている気がしてくる。なんで、ご飯を食べるというだけのことが、うまくできないんだろう。どうせ僕なんてダメなんだ。人生、こんなことばっかりだ……もう水道水をガブ飲みして寝よう……。
腹が減りすぎているせいか、沈みかけている太陽のせいか。今夜入れる店が見つからない、ただそれだけのことなのに、これまでの人生の選択がすべて間違っていたような気がしてくる。いや、そんなことを考えている場合ではない。まず何か食べたほうがいい。
コンビニの前を何度か素通りして、結局、町中華に入った。
それなりの観光地のはずなのに、客は地元の人ばかりのようだった。細長い店の奥から、香ばしい匂いと、何かを炒める音がしていた。夫婦でやっているのだろうか、たどたどしい日本語のお母さんが、心なしか優しかった。
僕が自分のことをどれだけダメだと思っていようと、そんなこととは関係なく、豚肉とキクラゲの卵炒めはおいしかった。
落ち込んで見えたのだろうか。お母さんがそっと、僕にだけヤクルトをくれた。
気を遣ってくれたのか、ただなんとなくだったのか、理由はわからない。でも、あのときの僕には、その「僕にだけ」がずいぶん効いた。ついさっきまで、どこにも自分の席なんてないと思っていた人間が、ヤクルト一本で、ここにいてもいいような気になっている。我ながら単純だ。